魂の人間讃歌  ジャズと人生と仏法を語る 第13回

魂の人間讃歌  ジャズと人生と仏法を語る

第13回 アメリカの理想を詠う(2011.9.14/16付 聖教新聞)

希望は輝く!「不屈の一人」がいる限り

ショーター氏
新しい社会の建設は「対話」から
ハンコック氏
「開かれた心」「感謝の心」を広げ

ハンコック 池田先生、アメリカ創価大学へ、素晴らしい歌「希望の光」をプレゼントしてくださり、本当にありがとうございます。
 学生の皆さんはもちろん、私たちにとっても嬉しいサプライズでした。
♪希望の光を 世界に広げて
 自由と人道の旗を
 ついに朗らかに翻すのだ
 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
 この悩める世界が
 我ら皆を待ちわびている
 我らの勇敢なる心が
 その呼びかけに応じる限り……
 先生が綴ってくださった歌詞の一節一節が、試練に立ち向かう、すべての友への限りない励ましです。大いなる「希望の光」が、まさにアメリカ創価大学から輝き広がっています。
池田 ありがとうございます。開学10周年のせめてものお祝いにと、準備を進めました。
 歌をつくるということは、何度やっても大変です。喜んでいただき、安心しました(笑い)。
 お二人の盟友であるアメリカ芸術部の作曲家ウェイン・グリーンさんが、一緒に曲を練ってくれました。何度も打ち合わせを重ねて、見事に仕上げていただき、心から感謝に堪えません。
ショーター この時代の闇を払い、新しい歴史を開きゆこうとする「一人立つ精神」が漲る歌です。「新しい歴史を築け!」との師の呼びかけと、それに呼応する弟子の誓願によって、正しい精神が受け継がれ、未来へと流れていく──そうした姿が彷彿として描かれた歌です。
 私たちの同志であるウェイン・グリーンが先生と一体で作曲に当たったことも、何よりの誇りです。
池田 皆さん方が、いかに深く強く麗しい同志愛と友情で結ばれているか。よく存じ上げております。
 5年前に東京牧口記念会館で、お二人をはじめアメリカ芸術部の皆さんが力強い合唱「私は奮い立つ」を披露してくれました。一生涯、私の胸奥から離れない響きです。あの歌を作詞・作曲してくれたのも、ウェイン・グリーンさんでしたね。
ハンコック おっしゃる通りです。
 師弟不二の労作業で、新しい「希望の光」という名曲が生まれたことに感動を禁じ得ません。
池田 歌は、つくるに際しても、歌うに際しても、心と心を一つに結び、新しい創造の生命をわきたたせる、妙なる力を持っています。
 この夏、東北学生部が主催した音楽祭にも、ハンコックさんからメッセージをいただき、参加された友人も驚き、皆が喜ばれていたそうです。
ハンコック 光栄です。メッセージに記した通り、私自身、今も、日々演奏するピアノの鍵の一打一打に祈りとエールを込めながら演奏しています。被災者の皆様と一緒に歩みゆく思いでおります。
池田 ありがとうございます。
 メッセージには、「音楽には、何か起ころうと、それを生かして、春のように花を咲かせていく力があります」とありました。まったく同感です。
 この音楽の持つ究極の力を、お二人は人生を通して示し切ってこられた。東北の被災地の青年たちも、その魂を受け継ぎ、「ロック・ザ・ハート(心を揺り動かせ)」とのテーマを掲げて、力強く歌声を響かせました。
ショーター 尊い取り組みです。
 音楽は、大目的のために、また家族のために、自分自身のために、変革し、戦う力を与えてくれます。
 それは、試練が襲いかかってきた時に、逃げ隠れしたり、人に押しつけたりせずに、立ち向かっていく力です。
 たとえ、人生にひとたび絶望してしまっても、踏み止まって、再び生き抜いていこうと、立ち上がる力です。
池田 その力を、青年がいやまして奮い起こしていけるように、私たちはさらに励ましを贈っていきたい。
 以前、ショーターさんが敬愛を込めて語っておられた、偉大なサックス奏者ジョン・コルトレーン氏の忘れ得ぬ言葉があります。
 「悲しみや苦しみに打ち勝ち、乗り越えたあと、人は必ず強くなる。以前とは比べものにならないほどに」(『ジョン・コルトレーン インタヴューズ』小川公貴・金成有希訳、シンコーミュージック・エンタティメント)
 人類の前途には、これからも、さまざまな苦難が立ちはだかるでしょう。しかし、断じて乗り越えていかねばならない。また絶対に「変毒為薬」して勝ち越えていける力が、人間には具わっています。
ハンコック 今回の東日本大震災をはじめ、近年、これまでは考えもしなかった、今までの人生で見なかったような出来事や災害が増えてきています。
 現代の直面する挑戦課題は、人類が存続できるかどうか、そのものを問いかけています。だからこそ、大切なのは、どのように行動していくかです。
 私自身、さまざまな困難にもぶつかってきました。その中で学んだことがあります。それは、困難な環境そのものは一時的な事象で終わったとしても、その困難にどう対処していくかによって、永続的な影響がもたらされるということです。
ショーター そうですね。特に、人生における、いくつかの決定的な分岐点は無視することはできません。
 なかでも、9・11「米同時多発テロ」事件は、私に大きな影響を与えました。その後、私自身は新たな使命感を抱くようになりました。
        ♪
池田 「9・11」から、今年で10年──。私は妻と共に、犠牲になられたすべての方々に、あらためて懇ろに追善の祈りを捧げました。追善は平和の土台でもあります。
 光に満ちた希望の21世紀の幕開けが一転して、テロによる暗雲に覆われた衝撃は、言葉に言い表せません。
 「9・11」は、生命の尊厳を踏みにじる、いかなる暴力も断じて許さぬという「誓いの日」です。お二人は、あの日、どこにおられましたか?
ハンコック その日、私は事件のあったニューヨークのマンハッタンにいました。ホテルで、朝、仕事仲間の一人からの電話で起こされたのです。
 彼に言われるまま、テレビのスイッチを入れ、度肝を抜かれました。ちょうど2機目の飛行機が建物に衝突する直前だったのです。
 初めは、外国の軍隊が侵略してきたのかと思いました。何が起こっているのか理解できませんでした。ニューヨークは全くの混乱状態に陥り、私は4日間、そこから出ることができませんでした。
ショーター 私は、フロリダ州のマイアミにいました。私たちの住んでいたコンドミニアム(分譲マンション)のジム(体操施設)でランニングマシンを使いながら他の人々とテレビを見でいました。突然、ニュースキャスターが大きな声で叫び出しました。テレビ画面に衝突のシーンが何度も繰り返し映し出されていました。
 アメリカは「無敵」であるとの観念が突然、打ち砕かれる思いでした。
 なぜ、このような悲劇が起こったのか。人々は当初、「彼らはアメリカ人を僧んでいる」と言っていましたが、私は、もっと深い問題だと感じました。
 なぜなら、あの建物にいて犠牲になった方の中には、イスラム系の人々も大勢いたからです。本当に疑問だらけで、世界の出来事について自分がいかに無知であるかを思い知らされました。その時、アメリカに関する私の考えや気持ちに、変化や転換、超克、そして目覚めが生まれました。
ハンコック 当時、大変な混乱状態でした。我々に必要なことは、「我々の行為の何が、あの暴力行為につながったのか」「我々のやってきた行為の中に、あの暴力行為を引き起こす何かがあったのか」ということを反省するだけでなく、「人々にアメリカ人をもっと肯定的な目で見てもらえるようにするために我々のできることは何か」についても考えるように働きかけ、励ますことでした。
池田 傷つき苦悩するアメリカの人々と共に悩み、共に新たな蘇生の一歩を踏み出すため、お二人はそれぞれ、事件の直後から演奏のツアーに出られたと伺いました。
 仏法者として、芸術家として、人間として、やむにやまれぬ使命感にかられての行動だったと推察します。
ハンコック 私は当時、自分が正しい姿勢を持てるようにと、本当にたくさんのお題目を唱えました。ツアーの中では対話や癒し、立ち上がること、共通の長所を称え合うことの必要性について、単刀直入に発言しました。
 聴衆は、失われたものについての、重苦しく、悲しい、内省的な音楽を予想していたと思います。しかし、私は「そのような音楽は演奏しません。明るく楽しく、啓発的で、創造力と希望をかき立てる、まるで不死鳥が灰の中から昇ってくるような音楽にします」と言いました。
 アメリカは大丈夫です。元気になります。このような行為が2度と起こらない環境や世界をどうやったら創れるか、その答えを見つけるには人間の内面を見つめる必要があります」──このことを、すべての人々に伝えるために演奏ツアーを活用することが自分の使命であると思いました。
 すでに多くの言葉が飛び交っていましたので、長々と語りたくはありませんでした。スピーチは、ほんの数分、簡潔な言葉を述べるにとどめて、音楽のもつ歓喜と創造力に私たちの言いたいことを語らせました。
ショーター そうだね。どこで公演しても、アメリカの偉大さとか、アメリカになされた不正について語ったり、アメリカは天使で、中東は悪魔であるかのような話は、決してしませんでした。演奏を終えると、多くの人々が称賛の言葉を送ってくれました。聴衆の皆さんは「このような音楽がもっと必要だ。このような本物の文化がもっと必要だ」と言ってくれました。
池田 「文化の戦人」の信念に感銘しました。智慧を働かせて、聡明に皆をリードしていくことが、永遠に栄え続けていく道です。
 文化とは、人間性を破壊しようとする蛮性との闘争です。人間の絆を引き裂く分断との闘争です。生命の善性を目覚めさせ、結び合わせる戦いです。
 この「文化」の真髄の力を、いざという時に、お二人は全生命で発揮され、魂の共鳴を広げていかれたのです。
ショーター ありがとうございます。私自身、英語の「文化(culture)」という言葉は、極めて重要な価値と理念を表すいくつかの言葉の頭文字から成り立っていると思っています。
 Cは結びつき(connection)、Uは団結(unity)、Lは学ぶこと(learning)、Tは粘り強さ(tenacity)、二つ目のUは不屈(undaunted)、Rは弾力的な結合力(resilience)、Eは永遠(eternal)を、それぞれ示します。
池田 一つ一つが的確であり、重要な定義ですね。私も仏法者として、“暴力的な報復は、また新たな報復を生み、悪循環となる。相手の善の心を信じ、差異ではなく共通点を探すところから始めてこそ、平和は生まれる”と訴えてきました。
 テロの直後、アメリカで発刊された書籍『灰の中から』にも寄稿しました。
 「仏法では、『人間の生命は、全宇宙の財宝よりも尊い』と説く。その生命をいとも簡単に踏みにじるテロは、どんな大義や主張を掲げようとも、絶対悪である。ましてや、宗教の名においてテロが行われたとしたら、それは“宗教の自殺行為”であろう。人間を救うべき宗教にとって、絶対に許されるものではない」と。
ショーター 心から賛同します。
 『灰の中から』の副題は「米国へのテロ攻撃に応える心の声」でしたね。仏教、キリスト教、イスラム、ユダヤ教、ヒンズー教の各宗教を代表するリーダーをはじめ、世界の精神的指導者70人が寄稿しています。メディアでも大きく取り上げられ、多くのアメリカ人が求めて手にしました。
 池田先生は、そのなかで「たとえ時間がかかったとしても、人間にそなわる善性を信じ、そこに呼びかけ、働きかけていく『文明間の対話』という地道な精神的営為を、あらゆるレベルで重層的に進めていくことが肝要ではないだろうか」と呼びかけられています。
 まさに先生が示されている通り、理想の世界を創造するためには、「学習」や「対話」というプロセスが大切です。「急がば回れ」です。それは互いに学び合いながら、マイナスをプラスへと転換し、そして毒から薬を抽出していくプロセスです。
池田 私は、その翌春、インドネシアを代表するイスラム指導者のアブドゥルラフマン・ワヒド元大統領ともお会いし、新しい対話を開始しました。それは『平和の哲学 寛容の智慧──イスラムと仏教の語らい』という対談集として結実しました。今こそ宗教間対話が大事であるという思いが、互いに強くありました。元大統領が音楽をこよなく大切にされていたことも、懐かしく思い出されます。
 文化を愛し、芸術を愛する人間同士の対話は、あらゆる差異を超え、心と心を結んでいく──これも、ワヒド元大統領をはじめ、世界の知性と一致した結論でもあります。
ハンコック 私たちは、人々、特にアメリカ人を励まし、世界の人々や文化に感謝するよう促さなければなりません。なぜなら、この国は移民の国ですから、世界の他のすべての人々は、祖先をたどれは、私たちの兄弟姉妹であり、彼らの文化の中に私たちの文化の起源があるからです。
 アメリカ人が「開かれた心」を持ち、自分たちの社会の外側にいるかもしれない人々を理解し、その人々と対話し、そして、その人々に感謝するよう、励ましていくことが私たちの仕事です。
池田 「開かれた心」そして「感謝の心」──キーワードですね。ジャズの巨人コルトレーン氏も、万事において、互いに「理解するよう努める」ことを強調していましたね。「理解があれば、きっと想像もつかないことを成し遂げられる」(前掲書)と。
 ともあれ、暴力の連鎖に歯止めをかけるのは、「それでも対話を!」という人間の生命の奥底からの叫びであり、その粘り強い地道な作業です。
 対話こそ意志が生み出すものです。非暴力とは真理に基づく運動であり、真の強さの証しなのです。
ショーター 先生がおっしゃった、人の善性を信じ、語りかけるためには、自らの生命の境涯を上げなければなりません。そうすれば、対話が始まったときに肯定的な何かが生まれます。
 私は今、社会が「暴力」でなく、「対話」の選択肢へ向かっているような兆しを感じます。その「対話」への願望が「恐れ」から生じていなければ、なおさら良いことです。なぜなら、たとえ「対話」がなされても、そこに「恐れ」や相手を一方的に「判断」することがあれば、相手に耳を傾けていることにはならず、実りある「対話」にはならないからです。
池田 「対話」というものの本質を鋭く突く言葉です。かのケネディ大統領は、有名な就任演説の中で訴えました。「決して恐怖から交渉してはならない。しかし、決して交渉することを恐れてはならない」(ケネディ著『ケネディ登場』高村暢児訳、中央公論新社)。この「交渉」という言葉を「対話」と置き換えれば、そのまま対話の心得ともなります。
 対話は、相手次第ではなく、自分次第なのです。恐れに支配されることなく、勇気をもって自分自身の心を開き、相手と対等な立場で語り合うことです。
ショーター 敵と思う相手でも、真正面から向き合い、目と目で見つめ合えば、お互いが抱いていた偽りの想定の向こうにあるものが見えてきます。同じ人間として接する時、何かが起こるのです。敵愾心に代わる新たなものが見えてくるのです。それは、「開かれた心」への道です。
池田 その通りです。先ほどハンコックさんが言われた通り、異なる文化的背景を持って集った人々が建設した多様性豊かな大地がアメリカです。
 自由で気取らないアメリカ、明るく朗らかなアメリカ、創造性光るアメリカ──私の胸中に輝くアメリカは、虹のごとく多彩にして鮮やかです。

前進こそ勝利! 前進する人が勝者!!

ショーター氏
向上のチャンスは常に「今この時」
ハンコック氏

艱難を乗り越えてこそ道は開く!

池田 「9・11」事件は、アメリカ創価大学(SUA)の第1回入学式から、わずか18日後の出来事でした。その中で、誉れの第1期生は、SUAのモットーの一つ「平和連帯の世界市民たれ!」の意義を真剣に思索し、自分たちの使命を確かめ合いながら、力強く歩み出してくれました。
 SUAでは、あのテロで大好きな父を亡くした姉弟も学んできました。断じて負けないで、お母様を守りながら、懸命に学び抜いて卒業し、今、学究また教育の分野で大活躍しています。強く明るく生き抜くご一家の勝利の晴れ姿が、私は本当に嬉しい。
 ショーターさんとハンコックさんのお二人も、幾度となくSUAを訪問し、学生たちを励ましてくださいましたね。
ショーター 私たちこそ、アメリカ創価大学やアメリカSGIの青年たちに、いつも「希望の光」を送ってくださる池田先生に感謝申し上げます。
 アメリカには、青年への激励が必要だと感じます。なぜならアメリカの未来は、青年の手中にあるからです。
 そしてまたアメリカは、今後ますます、世界の舞台で、とても青年らしい役割を果たしていくと思います。建国200年を過ぎたばかりの最も若い大国の一つなのですから!
池田 私も、そう信じます。アメリカSGIメンバーは、青年を中心に「平和の文化の建設」展や「ビクトリー・オーバー・バイオレンス(VOV=暴力に打ち勝つ)」運動を展開し、全米に生命尊厳と人間革命の哲学の潮流を起こしました。VOV教材を使った「非暴力教育」は、地域の公立校でも採用されました。
 試練があればあるほど、生き生きと活力を漲らせ、一人一人が新たな可能性を開きながら、雄々しき挑戦の連帯を広げていく。私は、そこにアメリカの偉大な精神を感じます。そうした気風を心から尊敬し、愛する一人です。
 それはまた、仏法の精神にも通じます。妙とは「開く義」「具足・円満の義」そして「蘇生の義」と明かされている通りです。
ショーター アメリカは、合衆国憲法の精神とその意図していることを守らなければなりません。合衆国憲法には、さまざまな解釈が可能で、意見の不一致を生むような内容が含まれています。それらは憲法発布の当初から現在に至るまで政治的論議の中心的な問題となってきました。
 これらの問題は、私たちが自分たちで考える必要があり、一種の対話のきっかけとなるものです。合衆国憲法のこの特徴は、ジェファーソンをはじめ建国の父たちが意図的に盛り込んだものです。それをアメリカの若者たちは理解しなければなりません。
 私は、そうした対話についての発想は、「意見の相違があるとゲームで解決した」というアメリカの先住民の知恵からも学ぶことができると、ある本で読んだことがあります。しかし、それは本で読む以前に、池田先生に教えていただいたことです。
池田 アメリカは「青年の国」です。「永遠の完成」に向けて、決然と歩みゆく「未完成」──そこに、私は開拓の生命の躍動を感じます。
 人々は青年の魂を愛するように、その伸びゆく息吹に魅了されてきました。建国の父たちの発想に、先住民の知恵が合流していたことも、本来、青年らしい「学ぶ心」と無縁ではないでしょう。
ハンコック アメリカ、そしてアメリカの同志に対する先生の温かいまなざしと慈愛に感謝します。
 アメリカ合衆国は、希望に輝く世界である反面、移民の国としての建国の歴史の中で、不名誉な過去をもっています。先住民の大虐殺を犯し、奴隷を連れてきて、奴隷制度も用いました。それは、大変に汚れた過去なのです。
 にもかかわらず、今のアメリカの姿を見ると、長年にわたるこれら「過去」の行為の負の影響をしのぐ事業を、さまざまな形で開始しました。そこから新たな文化の形が現れました。
 例えば、アメリカの文化の形成は、音楽や言語やファッションに関して言えば、明白にアフリカ系アメリカ人社会のトレンドから直接、影響を受けており、これらの貢献は、アメリカ人の生活の中に深く取り込まれています。
 文化に対して開かれたこの態度は、アメリカの偉大さを表しています。下層階級の地位の低かった人々が、アメリカ文化を形成する上で、そのリーダーになったことは、まさに、アメリカの偉大さを示す一例です。
 今や、アフリカ人を父に持つ大統領も誕生していますが、それは終着点ではなく、アメリカがその偉大な未来性を今なお維持していることを示す、世界への明確なメッセージです。
        ♪
池田 アメリカの若々しい創造力は尽きません。そのみずみずしい文化が育んだ象徴的な詩人が、私も青春時代から親しんできたホイットマンです。
 ホイットマンの詠うアメリカとは、理想の社会、未来の来るべき社会としての“アメリカ”です。
 「“人の自主”をわたしは歌う、素朴な、個の人間を、
 が、それにもかかわらず口にする、“民主的”という言葉を、“大衆と一緒に”という言葉を」
 「わたしたちはここにぐずぐずしてはいられないのだ、
 愛する人々よ、わたしたちは進軍しなければならない、わたしたちは危険な矢面に立って耐えきらなければならない」(ホイットマン著『草の葉』富田砕花訳、第三文明社)
 個人の確立と民主主義を基盤とした人間の連帯。そして、そこに向けての誇り高き不断の前進と不屈の闘争──アメリカの理想と使命をホイットマンは誰にでも分かる言葉で詠い、呼びかけました。
 そうした“理想のアメリカ”と“現実の合衆国”のはざまで、貴国は揺れ動いてきました。
「9・11」という歴史的な試練にも遭い、今も多くの課題があるかもしれません。しかし、アメリカは必ず、ホイットマンが詠ったごとく、理想に向かって進み続けるでしょう。
ハンコック 本年、池田先生はホイットマン生家協会から「ウォルド・ホイットマン文学の英雄賞」を受けられましたね。あらためてお祝い申し上げます。
 アメリカで生まれたジャズも、一曲一曲は未完成といえます。演奏のたびごとに、完成へと向かっていく不断の挑戦です。
 だからこそ人々を引きつけてやまないのです。
ショーター 理想的なアメリカを思うと、これまで失われたり、あるいは疎かにされたり、見落とされてきた事柄があります。
 詩歌等の活字、および音楽や演劇を通しての文化交流は重要な役割を担っています。これらの文化的な表現手段を通して、お互いを理解し合い、私たちの理想的なアメリカの姿を思い描くことができるのです。アメリカ社会の現実生活の中に、理想的なアメリカが映し出されるべきです。
 果たして「アメリカの現実」と「理想のアメリカ像」は、合致しているのでしょうか。残念ながら、「ノー」と言わざるを得ません。現実のアメリカは、私たちが望むアメリカの姿を反映してはいません。だから、私たちは自分たちの思い描くアメリカを創りあげなければならないのです。
 私たちの目の前にあるアメリカは、実は、私たちの内なる生命、内面の思考・言葉・行動の表れです。アメリカ人は、長年の傾向として、内面的な思考や内省から逃避しがちです。また、人々はいつも「私の内面的世界は、あまりにも私的なものだ」と言います。しかし、それは、大いなる「心の財」を他の人々と共有しないことの弁解に過ぎないのです。
池田 大事な指摘です。
 仏法では「心の一法より国土世間も出来《しゅったい》する事なり」(御書563㌻)と説かれています。人間の「心の一法」のあり方で、国土も社会も大きく変えていくことができる。ショーターさんが言われるように、大いなる「心の財」を皆で共有する祈りと行動にこそ、この現実の社会に、人間共和の理想郷を一歩また一歩、築き広げていく道があるのです。
 詩や芸術も「心の財」の共有です。ホイットマン研究の第一人者であるエド・フォサム博士は、ホイットマンが考えていた「詩の本質」について、こう語られていました。
 「詩は、時代を超え、文化を超え、人々に開かれた“対話への心”を啓発する力を持っている」
 またホイットマンは、長い将来にわたり、合衆国にとって必要にして不可欠な問題として、「芸術を愛する国家へ変革していくこと」(ホイットマン著『民主主義の展望』佐渡谷重信訳、講談社)を挙げています。
 芸術は、内面との葛藤から生まれ、それを勝ち越えゆく力です。そこから“理想のアメリカ”を、さらに“理想の人類社会”を実現する生命の力が漲っていくにちがいありません。
        ♪
ショーター 私もそう念願しております。
 そしてアメリカは、今こそチャンスと捉えて、直面する困難な課題に取り組み、私たちの共通の未来に対する各々の役割を自ら進んで担っていく、そうした力を備えていると思います。それが、今、私の目に映っているアメリカの姿です。
池田 「理想への前進」とは「間断なき連続闘争」のことです。
 私が、青年たちに何度も贈ったホイットマンの詩に、こうあります。
 「さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて!
 決められた決勝点は取り消すことができないのだ」(前掲『草の葉』)
 宇宙は、森羅万象すべてが前進しています。私たちも前進するしかありません。座していては後退です。朗らかな前進こそ勝利です。生き生きと前進する人が勝者です。その意味で、毎日が出発なのです。
 ホイットマンを敬愛し、黒人の桂冠詩人と呼ばれたラングストン・ヒューズは「アメリカを再びアメリカにしよう。今までありつづけた夢にしよう」(『詩・民謡・民話 黒人文学全集12』早川書房)と詠いました。
 いかなる苦難があろうと、遠大な夢をあきらめず、挑み続け、ついに実現する。ここに、アメリカの底流に脈打ってきた、不屈の青年の魂があります。人類は、この希望の光を、今再び、若々しく生命の最も奥深くから輝かせていく時を迎えています。アメリカをはじめ、世界の創価の青年たちが、その先頭に颯爽と躍り出ていくことを私は祈っています。
ハンコック 池田先生が、アメリカ創価大学に贈ってくださった歌「希望の光」には、次のような一節がありますね。
♪艱難に勝る教育なし
 いかなる闇も打ち破らんと
 我らはただベストを尽くすのみ……
 私の最新のアルバム「イマジン・プロジェクト」も、その完成まで、さまざまな困難を乗り越えなければなりませんでした。「もうダメか」と思うことも、何度もありました。
 しかしそのつど、唱題を重ね、御書を拝し、池田先生の指導に勇気をいただいて、不可能を可能にしたのです。
 そうして「艱難」を乗り越えて完成した作品が、私に音楽のみならず、さまざまな平和貢献の道を大きく開いてくれました。
 私たちはこの「希望の光」の歌を、師の信頼の励ましとして、命に響かせて前進していきます。
♪社会に打って出る
 我らの心は
 建設の絆で結ばれている
 我らは誓う
 正義の理想に向かって
 今日も対話の橋を架けようと!
2011-09-17 : 音楽を語る :
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