東洋哲学研究所の創立構想50周年記念シンポジウムへのメッセージ 

東洋哲学研究所の創立構想50周年記念シンポジウムへのメッセージ 
            (2011.2.6 インド・創価菩提樹園内 創価菩提樹講堂)

東洋哲学研究所の創立構想50周年記念シンポジウム「世界平和のためのニュー・ヒューマニズム」が2月6日、インド・ニューデリー近郊の創価菩提樹園内にある創価菩提樹講堂で行われた。創立者の池田SGI(創価学会インタナショナル)会長は祝賀のメッセージを贈り、共催団体であるインド文化国際アカデミーのロケッシュ・チャンドラ理事長、インディラ・ガンジー国立芸術センターのチンマヤ・ガレカーン会長らがスピーチ。同研究所の川田洋一所長が登壇した。学術者、報道関係者、インド創価学会の代表ら600人が出席した。

池田SGI会長のメッセージ
(代読)

「暴力と戦争のない世紀」へ 対話で結べ「人類の全なる連帯」を

分断を起こす「利己心の闇」
「仏教人間主義《ヒューマニズム》の光」を送れ


 一、50年前の1961年(昭和36年)2月4日、私は、菩提樹のもとで釈尊が成道した地、ブッダガヤにおいて、仏教を基盤にした、人類の幸福と世界平和のための研究所の設立を構想しました。
 その時、私は、研究所の目指すべき方針として、三つの柱を立てました。
 第1に、アジアと世界の宗教の研究、第2に、法華経の歴史的、学術的、思想的研究、第3に、仏教の「人間主義」 「平和主義」の理論的研究、ならびに人材の輩出です。
 東洋哲学研究所は、この指針のもと、構想から50年の歴史を刻んできました。その半世紀の間、インドをはじめとする世界有数の研究・学術機関との交流のなかで、人類への仏教精神と哲学の“発信源”として、大きく世界へと羽ばたくことができました。
 当研究所の創立者として、インドから全世界へと広がる学術者、有識者の方々の温かいご支援のたまものであると深く感謝しております(大拍手)。

自らの主《あるじ》たれ
 一、さて、本日のシンポジウムは、「世界平和のためのニュー・ヒューマニズム」とのテーマを掲げております。
 ロケッシュ・チャンドラ博士は、私との対談のなかで、次のように、「人間主義」に基づく世界平和への道を指し示してくださいました。
 「人間の本質は、精神の内面で作用します。精神の内面的広がりがなければ、また、利己心を超越した潜在的な生命への意識がなければ、外面的文明は精気を失ったものになってしまうでしょう。
 マハトマ・ガンジーは、『自身の内面を制御する力に気づかなければ、真に自立することはできない』と、強く主張しました」と。
 博士は仏教の視座から、「あらゆる生命に内在する『仏性』を呼び覚ますことができれば、環境、社会、精神のそれぞれの次元で、平和は確かなものとなります」と指摘されています。
 「利己心を超越した潜在的な生命」「自身の内面を制御する力」とは、仏教的に表現すれば、万物に内在する「仏性」といえるでよう。
 一、ガンジーと同じく、釈尊も、利己心や煩悩を制御して、自立する「自己」を説き明かしています。
 「ダンマパダ」では「自己こそ自分の主である。他人がどうして(自分の)主であろうか? 自己をよくととのえたならば、得難き主を得る」(中村元訳『ブッダの真理のことは・感興のことば』岩波文庫)と述べ、「ウダーナヴァルガ」でも「賢者は、自分の身をよくととのえて。明らかな知慧を獲得する」(同)と言いました。
 そして、入滅に際して、弟子に次のような指針の言葉を残しています。
 「この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法を島とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ」(中村元訳『ブッダ最後の旅──大パリニッバーナ経』岩波文庫)
 ここに示された「自己」とは、宇宙根源の「法」と一体となった「大我」であり、利己心や煩悩にとらわれた「小我」ではありません。
 宇宙生命と融合し、一体となった「自己」(大我)こそ、内面を制御する力であり、真に自立した「自己」です。
 このような「自己」(大我)によって、あらゆる煩悩・悪心を制御するところに、平和創出の原点があることを明らかにしたのです。

わが生命は宝塔
 一、釈尊の悟達の法を表現したとされる「法華経」では、見宝塔品において、生命の大地を割って巨大な「宝塔」が、この現象世界へと涌出してきます。金・銀・瑠璃等の七宝に飾られていたと記されています。
 「宝塔」は、「宇宙大の生命」の表現であり、「精神の内面的な広がり」の象徴です。
 この「宝塔」について、日蓮大聖人は、「我が身宝塔にして我が身又多宝如来なり」(御書1304㌻)と仰せです。
 さらに、七宝については、「聞・信・戒・定・進・捨・慚の七宝」(同)と言われ、
 「仏性」を飾る七つの善心であると示されました。
 つまり、他者の言説に耳を傾け(聞)、根源的信頼心を確立し(信)、慈悲・不殺生等の倫理性を備え(戒)、身心が統一され(定)、努力精進に努め(進)、偏見・差別心にとらわれない平等心をもち(捨)、常に自他への反省を怠らない謙虚な精神(慚)を指しています。
 こうした善心に飾られた宇宙大の「宝塔」、すなわち「仏性」が、すべての人々に内在しており、しかも、顕在化することができるというのです。
 「仏教の人間主義」による世界平和の構築は、ロケッシュ・チャンドラ博士が指摘されるように、まず、エゴイズム、煩悩、無明を打ち破り、利他心、慈悲、智慧、信、勇気等の善心(菩提)を輝かせゆく「人間革命」を原点としています。心、精神の「シャンティ」(平和)の確立です。ここに、真に自立した「自己」が形成されるのです。
 その平和の心を確立した「自己」が、人間社会を動かし、戦争、紛争、人権抑圧、貧富の格差を超克しつつ、人類社会を積極的な平和への軌道へと導きゆくのです。
 「積極的平和」とは、「自己」から現れる“善心の連帯”が、直接的暴力のみならず、その基盤にある構造的暴力にも挑戦し、乗り越えていくところに創り出されゆくものです。
 さらには、宗教・文化の引き起こす文化的暴力にも挑戦し、文化共存の社会を築き上げていくのです。
 このような平和社会の構築は、地球生態系との共生への道と一体不二です。つまり、「人類社会」の平和は、その存続を可能にする「環境・生態系」の平和の創出とともに、輝きを放っていくのです。
 まさしく、仏教の人間主義は、「心の平和」の確立を原点として、“善心の連帯”をつくりあげつつ、「人類社会」と「地球生態系」の平和、すなわち、積極的な世界平和の建設に向かうのであります。
 「戦争と暴力の世紀」であった20世紀から「平和と非暴力の世紀」への転換を望んだ21世紀の文明も、未だに物質至上主義のなかにあります。残念ながら、平和と幸福への「精気」を失い、核の脅威、戦争、環境破壊が、人間性(善心)の衰退を引き起こし、人間の心、社会、自然生態系を分断しゆく煩悩(悪)のエネルギーのさらなる暗躍を許しています。
 このような人類文明の動向にあって、仏教の“人間主義”を掲げる本日のシンポジウムが、物質至上主義、グローバリズムの潮流のなかで失われゆく人間性、善心を蘇生させ、「心の平和」「社会の平和」「生態系の平和」をともに可能にする真実の「世界平和」を創造しゆく、希望と連帯の“新たなる船出”となることを、希求してやみません(大拍手)。

川田所長の講演(要旨)

創立の理念を永遠に継承
法華経の平和主義を世界へ


 釈尊の生きた時代のインドは、多くの小国が次第に大国に併合されていく変動期で、戦乱が絶えず、また人々の間でも論争や紛争がやまない社会の様相を呈していた。
 こうした時代状況のなかで、どうすれば、地球上に平和と共生の世界をもたらすことができるのか──釈尊の出家・成道への基点となった深層体験の一つは「衝撃」「恐怖」として語られている。
 釈尊は、6年間の苦行の後、菩提樹下の禅定に入っている。禅定は、“今、ここ”の自身の表層意識から深層意識へと深まっていく。そして、個人の次元を超えて、トランスパーソナル(超個)の領域へと入っていくのである。
 すなわち、家族や友人等の心と通底する次元があり、そこから、部族、民族、人類の次元へと入っていく。釈尊は、争いや生死や病の苦しみのない安住の世界を求めたが、そのような所はどこにも見出しえなかった。
 一体、何が、人々を衝突させ、闘争と戦乱に駆り立てるのであろうか。その瞬間、釈尊は、すべての人々の深層領域に“一本の煩悩の矢”が突き刺さっているのを洞察している。
 この、あらゆる人々の深層意識に突き刺さった“煩悩の矢”について、池田SGI会長はハーバード大学での講演(1993年9月)で“差異へのこだわり”であるとの見解を示している。
 釈尊の禅定は、さらに深まり、人類総体の深層意識から、地球という惑星、恒星の生死流転の次元をも突破して、宇宙それ自体──宇宙生命と一体となる禅定の最深部、究極の所まで深まっていった。そこに「宇宙根源の法」(ダルマ)を洞察している。
 釈尊の入滅後、教えが多くの経典としてまとめられていくが、そのなかに、初期大乗経典として位置づけられる「法華経」がある。
 「法華経」は、鳩摩羅什によって漢訳され、中国、朝鮮半島を経て、日本に伝えられ、日本民族の精神と文化の基盤となっていった。「法華経」に包含された釈尊の「平和の心」は、その深遠な哲理とともに、全アジアの民衆の精神に届けられたのである。
 そして13世紀、羅什訳の「法華経」、すなわち「妙法蓮華経」を、釈尊の悟達の心を正確に表現した経典であると高く評価した日蓮大聖人によって、人類を救済する民衆仏教が形成されていくのである。
 釈尊の平和の心と煩悩との対決によって開示された、「宇宙根源の法」。そこに根ざした大我としての「自己」の形成を目指す仏教ヒューマニズムが、インドから日本、東洋全域へと伝承されたのである。
 この仏教ヒューマニズムこそ、21世紀の人類文明を転換する新たな人間像を示しているのである。
 21世紀初頭の今日、地球の資源も、エネルギーも、自然生態系も、果てしない貪欲とエゴイズムによって、枯渇し、汚染され、人類の生存そのものが危惧されている。
 この21世紀の開幕に先立って、SGI会長は、すでに1961年(昭和36年)の2月4日、仏教ヒューマニズムの原点である釈尊成道の地・ブッダガヤに立ち、当研究所の設立を構想したのである。
 創価学会の牧口初代会長は、仏教の「平和主義」を貫いて殉教され、その後を受けた戸田第2代会長は、日本全土に、仏教の平和の心を広められた。SGI会長は、2人の恩師の誓願を引き継いで、全世界へと仏教ヒューマニズムに基づく平和創造の旅にたたれたのである。
 仏教を源泉として展開してゆく分野は「平和」「人権」、「女性」「地球環境」「経済」「社会」「現代科学」から「教育」「倫理」にまで及ぶ。
 それはすなわち「人類的課題」への対応であり、その超克のための理論の創出であり、「文明間対話」「宗教開対話」への理論的基盤の構築である。
 創立者の期待を、現実のものとするべく、当研究所は構想の発表からこれまで、50年の歴史を刻んできた。今後、さらなる発展を期していきたい。
2011-02-22 : スピーチ・メッセージ等 :
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