新 あの日あの時 13

新 あの日あの時 13     (2009.8.24付 聖教新聞)

池田先生と東北

東北は「2倍戦い」「2倍勝つ」

北国の“熱い夏”
 遠くで汽笛が聞こえた。
 C57型。スマートなスタイルをしていて、後年、SLファンから「貴婦人」と呼ばれる蒸気機関車だ。
 「あれでね」
 「んだ」
 古びた弘前《ひろさき》駅。青森支部弘前地区の十数人が首を伸ばす。1960年(昭和35年)8月29日。大時計は午後3時20分をさしていた。
 あの急行「津軽」に、池田大作会長が乗っているはずだ。
        ◇
 青森の8月は、ねぶた祭の「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声で始まる。弘前、黒石、五所川原でも灯籠山車が満を持して出陣する。
 しかし、今年は第3代会長が誕生して最初の夏。夏休み返上で折伏に討って出た。「みっけだ!」。田んぼの人影に声をかける。返事がない。よくよく見ると案山子だった。
 行く先々で水をまかれ、塩をまかれた。
 「いらね、いらね! もぉ来《く》な!」
 反発されるほど燃えるのが、津軽のじょっぱり精神である。
 29日、情報が飛び込んだ。池田会長が訪問先の北海道から、秋田経由の急行「津軽」で帰京する。
 こうして弘前地区の面々は、弘前駅で待ちかまえていたのである。
 「津軽」の茶色の客車の窓がサッと開いた。「お元気ですか!」。池田会長だった。
 停車時間は短い。しかし、渾身の指導が奔《はし》った。「題目をあげ抜いてください!」「皆さまによろしく!」
 祭りも盆も関係なく、弘教に汗を流してきた一人一人の顔が、くしゃくしゃになった。
        ◇
 ねぶた。竿灯。七夕。花笠。東北は冬が厳しいぶん、夏の祭りは燃え上がる。だが学会の夏は、もっと熱い。
 82年の夏も、そうだった。8月22日、第1回宮城平和希望祭。
 会場の宮城県スポーツセンターにクーラーはない。水銀柱は、ぐんぐん上がり、館内は40度に達した。最後にマイクを握った名誉会長。
 「私は身体が弱かった。ならば精神を鍛えようと19歳の時に信仰した。いかに批判さ
れても、精神を鍛えた私には何でもない!」
 翌23日、仙台空港に向かう途中、閖上《ゆりあげ》漁港の「南雲魚店」に立ち寄った。2階で懇談していると、3人の孫がパタパタと走り寄る。
 「昨日は出演したの?」
 名誉会長が尋ねると、一番上の孫娘が答えた。
 「豊年こいこいです」
 香峯子夫人が「まあ、あの難しかった歌ね」。名誉会長もうなずいた。
 「そうか。将来、創価大学にいらっしゃい」
 約束どおり創価女子短大に進んだ孫娘。卒業後、故郷に帰り、女子部、ヤング・ミセスで東北を走った。
 仙台の帰路、名誉会長は語った。
 「暑い日に何かを成し遂げたということは、一生の思い出になるんだよ」

会津藩の覚悟
 「会津に鶴ケ城という城がある」
 東京・八王子で創大生と懇談していた創立者が、福島の話を始めた。
 「行きたかったけれど、今回は寄れなかった」
 つい3日前、福島から帰京したばかりだった。
 78年(昭和53年)6月2日の夕刻である。
 幕末、会津藩の鶴ケ城は猛攻撃を受けた。
 「なぜ狙われたか分かるかな」
 学生たちが首をかしげる。
 「敵は急所しか狙わない。鶴ケ城だけは怖かったからだ」
 会津は教育に力を入れていた。藩校「日新館」で文武両道を鍛え、精兵を育てた。
 「頼んだよ。あの額の下で記念撮影をしよう。みんなは会津グループだ!」
 『自身鍛錬』の額の下で記念のカメラに納まった佐藤修。集まった創大生のなかで、ただ一人、福島出身者だった。
 福島に帰り、小学校の教員になった佐藤は、2004年に48歳で校長に抜擢された。
        ◇
 福島に難攻不落の城を築いてきた。
 第3代の会長になって、最初の正式な東北指導も福島を選んだ。
 60年6月4日、郡山市民会館。人があふれ、第2会場、第3会場まで用意された。
 なんだ第3会場か……。
 会津から来た川宮康雄は29歳。若い漆塗り職人である。
 ところが終了後、突然、新会長が姿を現した。
 「池田でございます。私は第3代会長ですから、第3会場の皆様とは縁《えにし》が深い」
 どっと笑いがはじけた。
 それから35年──。
 川宮は、福島研修道場で名誉会長と再会する(95年6月)。
 来場者を歓迎するための特設コーナーが並び、会津塗のブースには伝統工芸師になった川宮がいた。
 6月19日、ブースに立ち寄った池田名誉会長から質問された。
 「御書に『うるし(漆)干ばいに蟹の足一つ』と仰せですけど、あれは本当ですか?」
 「はい。漆でかぶれた皮膚に沢ガニの汁を塗ると治ります。漆は蟹ですぐにダメにな
ります。ですから本当です」
 「そうか、大聖人はウソを仰しゃらない。何でもご存知なんだ」
        ◇
 この御文は、いかに信心を貫こうとも、正法に背けば水泡に帰す譬えである。
 89年(平成元年)7月、宗門の阿部日顕が福島県内の禅寺に墓を建立し、こっそりと墓参した。
 後に、福島の幹部が、この事実を突き止め、有名な「禅寺墓」事件が白日の下にさらされた。日顕宗の邪義は、福島で正体を暴かれ、破折されたのである。

詩心と米沢、八戸
 池田名誉会長が、青森・奥入瀬の滝に寄せて詠んだ“滝の詩”。
 今、全国の壮年部員が奮い立つ詩の源流も東北にある。
 この奥入瀬渓流をはじめ、東北を讃えた名誉会長の長編詩「みちのくの幸の光彩」が、山形の地元紙「米沢日報」の新年号を飾ったのは99年(平成11年)である。
 社長の成澤《なりさわ》礼夫《のりお》が、この詩には東北人の心がある、と惚れ込んだ。数日後、名誉会長から自筆の漢文が届く。
 「特立而独行」
 (世の風評に左右されず、自己の信念に立って行動するの意)
 自分の目で確かめてみよう。成澤は創価大学、アメリカ創価大学、イギリスのタプロー・コートなどへ取材に飛び、特集記事を書いた。
        ◇
 八戸に拠点を置く三八五《みやご》グループの代表・泉山元《はじめ》(青森経済同友会の代表幹事)は、名誉会長の詩を事業の指針にしている。
 「強くなれ! 強くなれ! 絶対に強くなれ! 強いことが幸福である……」
 2004年、関連37社の全事業所に、詩を印刷したポスターを張り出した。
 「厳しい経済情勢の中で奮闘する全社員に、この強い心を浸透させるためです」

口と口の戦いだ!
 「たいへんだ! 池田先生が水沢に寄られるかもしれないぞ!」
 東京で下宿していた岩手出身の学生部員の吉田裕昭や鷹觜《たかのはし》猛男は、こんな電話をかけ合った。取るものも取りあえず、午後11時32分上野発の夜行列車「いわて3号」に飛び乗った。
 79年(昭和54年)1月11日、池田名誉会長は完成まもない水沢文化会館を訪れる。
 翌12日、名誉会長の来県の報を受け、8000人の会員が駆けつけた。
 名誉会長は全員参加の自由勤行会を提案。自ら司会役を務め、雪道を越えて続々と訪れる友を励ました。
 役員を慰労する会合で吉田ら学生役員を見つけた。
 「岩手は大変なところだ。一人一人を守りなさい。そういう人に、君たちがなるんだ!」
 この時に馳せ参じた若者たちは、やがて岩手のリーダーに育つ。
        ◇
 「秋田には学会の原点がある」と指導したのは、94年8月27日の鹿角《かづの》会館である。
 この年の秋田の勝利は轟いていた。新年勤行会を“日本一”の結集で荘厳。春先には、機関紙の大拡大で、正義の言論戦に勝利した。
 4月の本部幹部会。名誉会長は“師匠直結の秋田”を掲げて前進する秋田婦人部を最大に讃えた。
 「秋田大班《だいはん》」。草創期に、蒲田支部から伸びていったのが秋田である。
 「勝って、池田先生と、蒲田の白木のおばさんに報告するべ」
 十和田の支部長だった対馬久夫の口癖だった。鹿角会館を出発する時、対馬の娘・成田智枝子に、香峯子夫人が声をかける。
 「いつも私の実家にお手紙をくださる対馬さんの娘さんですね。本当にありがとうございます」
 この夜。対馬は、いつものように香峯子夫人の母堂・白木静子さんに電話をかけた。
 「池田先生を鹿角にお迎えすることができました。ますます戦います!」
 勝ちに勝って師を迎えた8月27日。この日は「総秋田女性の日」になった。
        ◇
 八戸市で食堂を営んでいた内城《ないじょう》重次郎《じゅうじろう》。
 71年6月14日、八戸会館。
 「何でもいい。功徳の実証を2倍にしよう」という名誉会長の指導に奮い立つ。
 「人間は目標がないと茫漠としてしまう」。経済力でもいい。友人の数でもいい。「何か」で2倍の境涯を広げよう。
 よし、だったら自分は商売で2倍になろう。内城は妻のツナと2倍の対話に徹した。気がつけば4年で倍増の売り上げになった。
 2倍戦い、2倍勝つ!
 東北に、新しい指標が生まれた。“2倍革命”に燃える東北の戦いは、東京、神奈川、関西をはじめ各地の勝利をリードしてきた。その使命は今、一段と重い。
        ◇
 「戦《いくさ》」という文字について池田名誉会長は東北で訴えている。
 「かつては口を二つ書く『戰』だった。戦は、口と口の戦いだ。言論戦だ。広宣流布は、語りに語っていかなければならない」
 勢いよく! 元気よく! 人々がアッと驚く大音声で!
 この夏、東北は語り抜いて勝つ!
2009-09-03 : 新 あの日あの時 :
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