世界との語らい 第36回

第36回
ロシア連邦・サハ共和国 ボリソフ文化大臣
                (2009.7.23.付 聖教新聞)
わが身は難攻不落なり
胸中に輝く智慧と勇気の“北極星”‼


 困難な闘争に、勇んで勝負を挑む人間は、尊貴である。
 逆境の中を、苦労して戦い抜く人生は、荘厳である。
 サハ共和国が誇る、大詩人クラコフスキーは謳った。
 「果てしなき勇気をもって
 絶望さえも打ち払い
 再び立ち上がるのだ!
 何百倍も
 燃え上がりながら!」
 この不屈の精神を体現しておられるのが、アンドレイ・ボリソフ文化大臣である。
        ◇
 サハは、ロシア連邦を構成する共和国の一つ。「シベリアの中のシベリア」と呼ばれ、国土の40%は北極圏である。
 最低気温の記録は、マイナス71・2度。夏と冬の気温差が100度に及ぶこともある。
 ボリソフ文化大臣を日本にお迎えしたのは、2004年の厳冬の1月であった。
 激務の大臣である。加えて、この時期は、空港もしばしば閉鎖される。マイナス50度以下では、飛行機の機体に付着した水分まで氷結し、エンジンの回転も鈍り、運航が危ぶまれるのだ。
 その中を、断固たる意志で来日くださった真心は、終生、忘れることができない。
 私との語らいで、文化大臣は言われた。
 「私たちは厳しい寒さも、やっかいとは思いません。マイナス40度といった寒さだと、ウイルスや細菌が活動できず、疫病は流行らない。
 私たちは、使命感を持っています。地球環境のために。私たちの自然豊かな広大な土地を守るという使命です」
 このサハの人々の誇り高き魂を、先師・牧口常三郎先生は、すでに100年前の『人生地理学』で讃えられていた。
 牧口先生も北国の育ちだ。
 「勇者にとっては、厳寒も友である」──サハの格言である。
 それは、北海道、東北、信越、北陸など、雪国で吹雪に胸張り、広宣流布の道なき道を開いてきた、創価の同志の気概と重なり合う。

民衆のために!
 ボリソフ文化大臣は、舞台芸術家としても名高い。32歳で、サハーアカデミー劇場の主席監督に就任した。手がけた作品は、ロシア連邦の名だたる賞に輝いている。
 溢れる才覚と篤実な人格。私との語らいでも、快活な名優そのものの振る舞いであった。「天才の中で、最も親しみやすい人」「大臣の中で、最も気さくな人」──サハの民衆の心を引きつけてやまぬ魅力を、垣間見る思いがした。
 大臣がリードしてこられたサハ・アカデミー劇場が標榜する理念には、こうある。
 「我らは芸術のための芸術を拒否する」
 「我らは、人間と民衆の運命のために作者が戦っていると、はっきり鋭く感じられる戯曲のみを認める」
 「我らは、役者が一個の人間として、人間と民衆の運命に真に心を痛めたとき、初めて役者の才能と情熱が観客に伝わり、演ずる役も観客を魅了し、共感を呼ぶことができると確信する」──と。
 何と誇らかな人間芸術、民衆芸術の宣言であろうか。「人間として人間のために!」「民衆と共に民衆のために!」
 それは、労苦をいとわず、声も惜しまず、尊き大使命に奔走してくれる、わが創価の芸術部の精神とも一致する。
        ◇
 大臣は、各国との芸術交流を積極的に推進されてきた。
 私が創立した民主音楽協会が、サハの国立民族舞踊団「ホトゥグ・スルス(北極星)」を招聘したのは、2001年、新世紀の出発の年である。日本の23都市で、3万人以上が鑑賞し、深い心の共鳴を広げた。
 大臣は語っておられる。
 「文化・芸術を伝えるには、“お互いを高め合い、豊かにしていくのだ”という『使命感』が大切です」
 日本にとって、大切な隣人であるサハの方々と、共に向上しゆく魂の交流を結び得た喜びは、誠に大きい。

言葉は偉大な力
 国土のほぼ全域が永久凍土に覆われたサハ。そこには、世界一の生産量を誇るダイヤモンドが眠っている。金、銀、石炭、石油、天然ガスなども豊富だ。
 凍土の中で「生存時のまま」保存されていたマンモスは、サハ共和国の尽力で、4年前に愛知で開催された「愛・地球博」や、一昨年、西大阪の住之江区で行われた展示会でも注目を集めた。
 豊かな自然、価値ある資源。それにも増して、サハを代表する真の宝は「人間」である。
 文化大臣は、私の対談集をはじめ『私の釈尊観』などの著作も読んでくださっていた。
 「一人一人の胸中に、仏の生命がある」と説く仏法哲学に鋭く共感を示されている。それは、「人間の心は海の如く、必要なもの全てを包含している」という大臣の洞察とも、響き合っているのだ。
 一人一人の生命に英知の精神があることを、演劇を通して思い起こさせたい! ここに、大臣の気高き信条がある。
 創価の人間革命の運動も、わが生命の大海に秘められた最上の智慧と力を、万人に発揮させゆく戦いだ。皆が励まし合いながら、人生と社会の大舞台で、幸福と勝利の劇を飾りゆくことである。
 そのための武器は、何か。勇気と慈愛の「言葉」である。
 「言葉は偉大な力を秘めている。言葉は人を元気にすることもできれば、殺すこともできる」とは、言葉の芸術を織り成す文化大臣の箴言だ。
        ◇
 若き日のボリソフ大臣が、庭掃除のアルバイトで掴んだ発見を伺ったことがある。
 冬、庭一面に張り詰めた、分厚い氷を割る時に、あっちこっちと突いても、少ししか割れない。しかし、一カ所を定めて打ち叩いていくと、そこから一気に、ひびが広がり、大きく割れるというのだ。
 万般にわたり、急所がある。そしてまた、大きく波動を広げるキーパーソンがいる。その人を見つけ、味方にすることだ。そこに勝利の方程式がある。
 ともあれ、一点に勢いを結集すれば、必ず活路は開ける。
 仏法で、「竹の節を一つ破ぬれば余の節亦破るるが如し」(御書1046㌻)と説かれる通りだ。

母は“心の理想郷”
 サハが一番、美しい季節は、一番、寒い時だという。
 人生も同じであろう。最も苦しい時にこそ、人間は最も光るのだ。それを、何よりも神々しく示してくれるのが、けなげな母たちである。
 文化大臣も語られている。
 「母は“心の理想郷”です」
 「感謝を込めて母のことを思えば、私たちを向上させてくれる、大いなる精神のエネルギーが発揮されるでしょう」
 ここに、人間が平和と幸福の道を歩みゆく原点がある。
 母に感謝しゆく青年は、人間の正道を外れない。
 母を大切にする社会は、必ず勝ち栄えていくのだ。

光れ!北区の友

 大臣は、私に語られた。
 「私たちのヤクート語では、北極星のことを『天の支柱』と呼びます」
 ソ連邦の崩壊をはじめ世紀をまたぐ激動の中、ボリソフ大臣ご自身が、揺るぎなき「文化の支柱」となり、不動の芸術の「北極星」となって、祖国を護り照らしてこられた。
 いかなる社会にあっても、仰ぎ見る北極星の存在が、勝ち光っていくならば、誰もが正しき進路を自信をもって進んでいくことができる。
 私は、北国の信頼する同志に、広宣流布の北極星と光れと語ってきた。さらに「北」の文字を冠した北区の友にも、同じ期待を寄せてきた。東京の北区をはじめ、札幌、さいたま、新潟、浜松、名古屋、京都、大阪、そして堺、神戸、岡山など、全国で北区の友の健闘が冴え渡っている。
        ◇
 大臣は、北極文化芸術国立大学の初代総長として、「人間」を育て上げてこられた。
 「誠実な心は、常に偽りを見破る」と、大臣は厳しく言われた。誠実でなければ、また真実でなければ、人の心は決して動かせぬことを、誰より知悉されている方である。要領や策など通用しない。
 その大臣が、創価の新春幹部会に出席され、感動されていたことがある。
 それは、会場の前方が青年部によって凛々しく埋め尽くされ、社会的な有力者などは、むしろ脇や後ろで、青年を見守っている配席である。
 そこに、正しき教育と文化の精神を見出してくださったのだ。さらに大臣は言われた。
 「演出家なので、どうしても舞台裏や演出に目が行きます。きょうの会場の、特に青年の方々の瞳を見て、『これは、作ろうと思って作れるものではない』と確信しました。心が鼓舞されました。
 こんな気持ちは、何十年来なかったことです。私の人生にとって、かけがえのない一日となりました」と。
 わが創価の青年こそ、新しき人類社会の北極星なのだ。
 その真摯な大情熱の瞳を、一段と強く燃やして、民衆の心を揺り動かしゆくことだ。そして、壮大なる正義の勝利の叙事詩を、21世紀の歴史に綴り残してもらいたい。
 サハには、名もなき民衆が作り上げた「オロンホ」という雄大な英雄叙事詩がある。
 その一節を、大臣と一緒に、私は世界の青年に贈りたい。
 「わが運命は不屈なり。
 わが力は無尽なり。
 わが身は難攻不落なり。
 わが威力は尽きず。
 わが運命は崇高にして
 永久《とわ》に崩れることなし!」


アンドレイ・ボリソフ(1951年~)
 サハ共和国文化大臣。オユンスキー記念サハ・アカデミー劇場主席監督。
 サハ共和国ニジリ村生まれ。サハ・アカデミー劇場の俳優、監督として活躍。演出した作品で「ロシア連邦国家賞」「ゴールデンマスク賞」などを受賞。ソ連人民代議員、ユネスコ・フォークロア委員会副会長、北極文化芸術国立大学の初代総長などを歴任。「ロシア連邦功労芸術家」「サハ共和国功労芸術家」の称号を持つ。
2009-07-23 : 世界との語らい :
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